孤律無演

SFとジャズが生きる糧

夏のロボット(ハル収録)瀬名秀明

※ネタバレありです。

嫌いな方はお引き取り下さい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

考えるという事はどういう事なのだろうか。

純粋な思考であるコギトは~とかそういう難しい話じゃない。

たまに誰かと直接、話してても感じる事ありませんか?

「こいつ、俺の話ホントは聞いてないんじゃないの?」と

その時に、突き詰めていくと反射的に、そんな事を考える

自分はきちんと、話を聞いているのかよ

という話にもなるんですけどね。

 

ハル (文春文庫)

ハル (文春文庫)

 

 

 

 

尊敬する瀬名秀明先生のSF短編集「ハル」に収録されている一遍です。

単行本だと「明日のロボット」だったらしいですけど改題されました。

いや絶対に明日のロボットの方がいいと思うんですけどね。

 

しかし文庫の初版を見てみると2005年とあります。

初出の掲載に至っては2001年です。

驚きです。いや早すぎでしょ。どれだけ最先端をリードしていたのか

 

「きみが考えていると思ったら、それは考えているって事なんじゃないかな」

 

これが全てを表している。

 

「例えば、きみと私が今話している、しかし君と私以外はその事を誰も知らない。ここで別れてしまえば、もう世界中の誰もがその事を知らなくなる。そうすれば君と私が話していた事実を証明する事はなくなる、誰にもわからない」

 

何を言ってんだ?という感じですね

 

うーん、説明出来ない感覚。

その前にあった動物は果たして「考えているのだろうか?」という問いとも併せて考えないとわかりにくいですね。これでも恋愛に置き換えたらわかりやすいのかも

 

女「あなた私の事を愛しているの?」

男「ああ、愛しているよ」

女「本当?だったら証明してよ!」

 

ま、そういう事ですね。あらゆる思考、感情を第三者が証明する事なんて、まず出来なくて、究極的には自分ですら自分の感情を説明できないし証明できないんじゃないかという事ですね。

 

この先生と恵の会話が恵の「ロボ次郎は自分で考えて喋っていたんだ!」という最早証明出来ない、幼き日の憧憬と合わさって二重比喩されている訳です。

そんな高度な事をしつつも一切説明しない瀬名秀明先生には驚愕という他ありません。

 

しかし本当、ロボ次郎の事考えると胸が締め付けられるようでたまりません

どこかの田舎町の古びた科学博物館の片隅にいるロボ次郎が、

世界の始まりと終わりや宇宙の全てを知りながらも

ひっそりと佇んでいると思うと微笑ましい気持ちになります

 

繰り返しますが私たちは考えているのか?古典的なAI「ELIZA」のように

発言に対してただなんとなく相槌を打っているだけなんじゃないか?

Please go on (続けて下さい)と、ね

こういう事を考えると最終的には黙って何もかも喋りたくなくなりますね。